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参加費はたったの2000円 ただしオツマミを一品持ち寄り
という、 フランスで流行っている隣人パーティののりで、とても
気楽な集まりでした。

この日のために集まった蔵元さんは7つ。銘柄は下記のもので、
手ごろな価格で飲めるものを、お持ちいただいたものだそうですが
それはとてつもなく高いものでないというだけで、かなりプレミアムだったようです。
清酒の他に、一部おいしいリキュールもありました。加えて仕込み水も。

栃木の小林酒造 鳳凰美田
宮城の新澤(にいざわ)醸造店 伯楽星、ひと夏の恋
秋田の斎彌(さいや)酒造 雪の茅舎(ぼうしゃ)
石川の御祖(みおや)酒造 遊穂
山形の小嶋総本店 洌、日本響
神奈川の熊澤酒造 天青
滋賀の喜多酒造 喜楽長

このコーディネートをされた酒屋の朝日屋さんによれば、
みなさん、全身全霊をかけていい酒を
醸している、真面目で素晴らしい蔵元で、なかなか揃わないそうです。
それぞれ持ち込まれたお酒も、全国で20店でしか手に入らない
特別なものとか、季節限定の自信作とか、
初めの説明を受けているだけでも、たまりません。

若干20歳で、全日本の利き酒大会で、全問正解で優勝して以来
数々の利き酒コンテストでもチャンピオンになられた
経験をもつ、新澤醸造店の杜氏、新澤巌夫さんから
利き酒のイロハの解説を受けて、いよいよ口切りです。

アドバイスにしたがって、2つのグラスを持って各蔵元の
前にいき、グラスに少しだけ注いでいただきます。香りを楽しみ、口に含み
神経を集中して味わっていきます。
本当の利き酒は、飲まないそうですが、ここは勿論全部飲みます。
飲みに来たんですから、そんな罰当たりなことはできません。
まして、石高の少ない貴重なお酒ばかりです。

一杯注いでもらって、そのお酒のお話をお聴きし、仕込み水を
飲んで、口の中をニュートラルにしてから、また、別のお酒を頂きました。
仕込み水も、おいしくておかわりをしてしまいます。
たくさんお酒を飲んできましたが、こうして飲み比べてみると
なるほど全然違うのがよく分かります。
ところが違いが分かっても、それを分析して表現して、記憶として
定着させるのができません。

いま口の中に起こっている味蕾の興奮を、自分に伝える言葉が
見つかりません。自分に伝えられないので、もちろん人に伝えられるはずが
ありません。ただただ、さっきのより酸味が強いとか、渋みが残るとか
その程度です。
舌に味覚の基準地図がないので、それぞれのお酒をプロットできません。
しかも、味をプロットする軸は、3次元も4次元も、いやもっとありそうです。

そして仮に、それをうまく分類できたとしても、その基準軸を再現できないことも
よく分かりました。
これでは私には、酒を利くなんて、絶対無理だと早々に悟りました。

そんなことをさっさとやめて、「あーこれも旨いな。こっちもこれで、味わい深いなぁ」と、飲み続けるのでした。

蔵元さんの中には、喜多酒造さんのように、食中酒を楽しんで欲しいと、
琵琶湖の鮎の山椒煮を持参してこられたところも。それをつまみながら
飲むのもたまりません。この鮎もすこぶる!!ああ、贅沢、贅沢。
また、参加者の中に「豆腐よう」を持参した方もいて、これも大好評。
酒好きの情熱には、頭がさがります。

蔵元さんに聞くお話もためになります。
「ワインも難しいのですが、葡萄のできがかなりのウェートを占めます。
日本酒は麹と酵母というふたつの複雑系をオープンな環境でコントロールするので
別の難しさがあるんです。実際には手探りなんです。」

「ということは、今年は失敗したというといいすぎでしょうが、去年の方が
よかった、ということも当然あるのでしょうね。」と、湧きあがっていた私の
疑問に答えてくださった蔵元の方のことばが、何よりの収穫でした。
「日本酒を飲むというのは、蔵を飲むことだと思うんです。人を飲むこと
なんです。」

その言葉は多分、今年のこの蔵の酒はどんなだろう。○山○夫杜氏は
何を目指したんだろう。そうか、こんなことをやろうとしているのか?
でも、きっとまだ十分じゃないんだろうな。

というように付き合うということなのだろうかと。

そして、したり顔で○×銘柄はどうだ、○×は不味いといっているのは
本当の日本酒好きではないんだろうな、とも思いました。

だって、こんなに真剣に取り組んでいる蔵元自らが、味の再現性は
かなり難しいことだといっているのだから。あるブランドを指して
「あの酒は」としたり顔で評している人は、「晴のち曇り、時々雨」の空模様の
曇りの時をみて、「曇ってんだよね」といっているような気がします。
蔵元にしてみれば「そんなに単純でもないんですけどねぇ」と
心で呟いていそうです。

以前、食と地域の関係に造詣の深い、ソルボンヌ大学のピット学長が景観会議で
来日し講演をされたことがあります。そこで彼は
「景観、景観とだけいっていてもダメ。美しい葡萄畑の景観は、そこから
できるワインを高く買う文化があって、初めて守られる。そこに生きて
働いている人をトータルに考えなければ、持続する環境はつくれない」
と話していました。

まさに、「日本酒を飲むことは、人を飲むこと、蔵を飲むこと」に通ずる
ではありませんか。日本に欠けているのは、こうした日本独自の酒文化に
対するプライドや愛情かも知れません。

「蔵を飲む、人を飲む」のお話をしてくださった新澤さんもそうですが、
蔵元の皆さんに共通しているのは、どなたも非常に熱心で、
やさしく、大らかで、そして謙虚だということ。
その謙虚さは、自然を相手にする奥深さを知り抜いていることから
きているようでした。
その熱意と志に触れているだけで、幸せな気持ちになりました。
自然の前に悩み、工夫されている農家の方と同じなのでしょうね。

最後に喜多酒造の喜多社長が、
「日本酒に必要なのは褒めるエネルギー。悪い酒はない、好みの違いだけ。
もっともっとランクの高いお酒を醸して、もっともっと日本酒のある風景を
拡げていきたい」と挨拶をされました。

私は、そうとう酔っ払いながら、ああ、日本酒の蔵と人のサポーターになって
ピット学長や新澤杜氏や喜多社長のいう、豊饒な日本酒の風景を
ずっと拡げていけるように何かできないかな、と思ったのでした。
ええ、たくさん飲むこと以外にもね。

企画をされた、サラリーマン文化芸術振興会の小林さんと会の皆さん、
朝日屋酒店のみなさん、はるばる東京まで来ていただいた蔵元のみなさん、
そして美味しいおつまみを持って集まった酒キチのみなさん、
芸達者なサラ文のエンタテナーのみなさん、
楽しいひとときをどうもありがとうございました。




紅一点。御祖(みおや)酒造の藤田社長と
小嶋総本店の宍戸さん




楽しい質問タイム   左から小林酒造、新澤醸造店、斎彌酒造、御祖酒造、小嶋総本店、熊澤酒造、喜多酒造の皆さん




サラリーマン文化芸術振興会(サラ文)のホームページは: http://www.sarabun.org/
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