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ご案内していただいたのは、この「大昆虫展」を企画された上席研究員の斉藤明子博士。
広報を担当された御巫(みかなぎ)由紀さんにもサポートいただきました。

斉藤明子上席研究員 後は蝶の「虹のかけはし」


この企画展のメインの展示室に入りました。
両側に昆虫をテーマごとに括った展示ケースがズラーっと並び、正面の壁にほぼ人間の大きさに拡大した昆虫の写真が展示されています。
「お時間のほうは、よろしいですか」と斉藤博士にまず聞かれました。
「ええ、大丈夫です」と答えましたが、この問いの意味がだんだん分かってくることになるのです。

この展示は、少し変わっています。普通なら「棲息地域」や「習性」や「近縁種」など、学問的な系統で分類されたものを、「学ぶ」ように見ていく展示スタイルですが、ここは全くといっていいほど学問の匂いがしません。代わりに、「色の多様性」とか「形の多様性」、「くらしの多様性」といった分類でコーナーが分かれています。いま流行の「多様性」という括りが、企画の意図なのでしょうか。

色の多様性のコーナーには、蝶でつくった大きな虹が。圧倒される見事さです。
編 「これはここでつくられたのですか」
斉 「他からお借りした標本をこちらでこのように刺しました。」
編 「この展示は、何種類ぐらいの昆虫がいるのですか」
斉 「だいたい1800種類で、5000匹くらいでしょうか」
編 「ここに沢山ある展示ケースもどちらかからお借りしているんですか」
斉 「いえ、ほとんどこちらでこの展示のために並べかえました。勿論、部分的に購入したり、借りているのもありますが」
編 「それは大変な作業ですよね。どのくらいの期間がかかったんですか」
斉 「考え始めたのが、2年前で、標本をケースに並べるのに半年くらいでしょうか」
編 「いやー、そうでしょうね。これだけのボリュームですから。それを何人でつくられたんですか」
御 「ほぼ、斉藤ひとりです」
編 「えぇ~~!」
斉 「種名ラベル刺しはボランティアの方にお手伝いいただきましたが」
これはただならぬ展示なのではないか、と思いはじめました。
編 「多様性という括りにされたのは、やはり子供たちに環境への意識をもってもらいたいと考えられたからなんですか」
斉  「う~ん、考えていったら、自然にそうなったというか。説明の文章がなくても、こんなにいろいろな面白い虫がいるということを見てもらえれば、子供たちが外へ出て虫を見たときに、今まで気づかなかったことに気づいてもらえるのでは、と考えたんですね。いままでと虫の見方が変わるとか。その結果環境を大切にしてくれたらという思いがあります
御  「この展示は、斉藤が子供のころから虫を調べてきて、『絶対面白いと思っているもの』を、見せびらかしているんですよね。もう、何十年も虫の研究をしてきて、『ほら~、こんなにへんなのがいるのよ~、これも変わってるでしょ~!』というものの集大成なんです」
そうか、多様性は結果、ということです。「形の多様性」は「こっちは、ちょー変なかっこの虫だらけだよ~」ということなんですね。県立の博物館では、その表現のトーン&マナーが許されなかっただけで。
編 「ということは、この展示は斉藤博士の頭の中を覗いているようなものですね」
御 「まさにそうです。ぜったい面白いものを集めた結果です」

ひとりの昆虫少女がずーっと研究してきた不思議な虫の世界の「とびきり変な奴ら」を博物館の20周年に託けて、勢揃いさせたというわけなんですね、これは。

さらに学問を展示するつもりのない斉藤博士は、セガのムシキングとコラボレーションも実現しています。
それまで出ていたムシキングカード全種類とホンモノの昆虫をはじめて並べて展示。


斉 「子供たちがカードでしか見たことがなかった昆虫の本物を見せてあげたかったんです」
御「もう、凄いですよ。ガラスが割れそうなほど齧りついてみるので、アクリルで標本箱を補強しました」
斉  「こっちのケースは、顔にみえる虫ばかり集めています。こちらは、そっくりなのに全然違う種類を並べたケース。こっちは分かりやすく世界一大きいとか重いとか。この世界一思いゴライアスオオハナムグリは別に花に潜ってくるわけではありません。さすがにこれは今は手に入らないので借りています。

  このヘビトンボは噛み付くんです。上からおさえても首を回してきてやられます。私も血を流しました。
このバイオリンムシも面白いでしょう。」
ひと箱の解説を聴いて「おもしろーい!」と思っていると、次のケースはもっと面白いということで、全くキリがありません。
御 「斉藤が解説するツアーは30分では、全然たりません。あっという間です」
斉  「そうですね。展示されている内容の解説だけお話しても沢山ありますし、自分が採取した時のことでもどんな場所で、どうだったかとか話し出すといろいろありますし」
この展示室の他にも、パソコンの中にある虫の画像を自由に拡大してみられるコーナーや本物の蜜蜂の巣箱の中のようすが見られる展示、オオムラサキの生態展示、などなど、盛りだくさんの内容をここで説明するのは、不可能です。是非ぜひ、千葉を訪ねてください。

最後におまけをひとつ。斉藤博士の専門は実はカミキリムシ。
その博士のダメだしに次ぐダメだしを乗り越えて完成した、お墨付きのオリジナルのペーパークラフトも販売されるそうです。
首もちゃんと動くそうです。8月10日、17日にはこのペーパークラフトの作者(やはりボランティアです)に直接、作り方を教わる体験イベント「中央博限定!紙でむしをつくろう」も行われます。


編 「ところでプロチュア会員のMushikichiさんはいつ頃からボランティアをされているのですか」
斉  「この昆虫展だけのボランティアを昨年の3月に募集しましたところ、小学生から上は70代の方まで39人、それに成田の高校の先生と生徒さん20人で、59名の応募がありまして、これまで準備イベントなど、たくさんのお手伝いをお願いしてきました。Mushikichiさんは、広報関係のノウハウをお持ちだったので、集客のための仕掛けにご尽力いただきました。それから、こんど蝶を館内で羽化させるイベントがあるのですが、そのための飼育をお願いしたりしています。飼育といっても、餌を買ってこれるわけではないので、餌になる食草を栽培したり、その餌を他の虫から保護したり大変なのです。もう、ほんとにボランティアの方がいなければ実現できていません。感謝しています」
Mushikichiさんにはお会いできませんでしたが、ご活躍の様子がお聴きできました。

ところで、こんなに素晴らしい展示なので、全国のデパートとかで巡回展示ができないのですか、とお聞きしたところ、営利の行為をしてはいけないので、どうも難しいということでした。この分類は二度とできない非常に貴重な財産なのに、会期が終わったらまたバラバラにされてしまうのでしょうか。そのことが私には、無性にもったいないと思われてなりません。なんとか、北海道や九州の子供たちにみせてあげたいと思います。どこかに知恵はないでしょうか。

若い頃、企画のセミナーを受けたときに
「企画はくわだて。くわだては個人の『思』や『考』の口説き」
「彼(彼女)でなければ、そうは考えなかっただろうということ、それが価値」
と教えられたことがありました。

コンラート・ローレンツの本や、デイヴィッド・アッテンボローの自然番組も同じ匂いがします。
まさに、この「大昆虫展」は、昆虫学者の斉藤明子博士の長年の「思い」や「考え」でくわだてた、未来のこころ豊かな大人たちへの口説き、なんだなーと思ったのでした。

斉藤さん、御巫さん、ほんとうに愉しいご案内、ありがとうございました。
Mushikichiさん、素敵な情報ありがとうございました。

展示の詳しい情報はこちらをごらんください。
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/exhibitions/special_ex/2008insect/insect_top.htm

プロチュア会員Mushikichiさんの記事は、こちらから読めます。
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