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リバース・モーゲージってどんな制度?

老後の生活費の手当ての方法としてリバース・モーゲージ(逆抵当)という制度が、再び注目されています。簡単にいうと、自分が所有している不動産を担保に、月々の生活費やリフォーム資金などを融資してもらう制度です。ローンを組んで不動産を購入するのと、全く逆なので、逆抵当(リバース・モーゲージ)と呼ばれています。
 なーんだ、ただの不動産担保ローンじゃないか、と思うのですが、決定的に違うのは、借りる側が高齢者に限られ、初めから現金で返すつもりはなく、担保を差し出すつもりで借りるローンということです。
いま、注目されているのは、高齢者福祉の財源不足が深刻化する中で、年金だけでは不足する収入を、こうした制度で少しでもカバーできるのではと期待されているためです。あくまで自助に期待する訳ですが。

(財)武蔵野市福祉公社 藤井悦郎さん
そこで、このサービスをパイオニア的に立ち上げ、長年提供してきた東京の(財)武蔵野市福祉公社をお尋ねしました。お話をお聴きしたのは、在宅サービス化の藤井悦郎さんです。
Q:いつ頃からこの制度を実施されているのですか?
A:この制度は、もともと親族に頼らずにひとりで安心な老後を送ろうという方をサポートしようと生まれた「基本サービス」の発展型なんです。事業としては昭和56年4月にスタートしています。
 この「基本サービス」は月々1万円の有償で、在宅時はもとより入院してからも、また亡くなられた後の葬儀、納骨、没後処理までもまとめてサポートするものです。ワンストップで包括的にお世話できる、こうした制度はあまり例がありません。例えば介護保険のケースワーカーの方は、ご老人が入院したらケア対象から外してしまいますが、 私どものシステムでは、ご老人のお金の管理から墓守まで最後まで一貫して面倒をみて差し上げるというものです。
Q:その「基本サービス」にリバース・モーゲージが追加されたのは?
A:以前こういうことがありました。身寄りのないご老人が市の特別養護老人ホームのような施設で亡くなられたのですが、生前は誰も面倒をみなかったのが、亡くなられたとたん三十数人の甥姪が現れて一億円以上の不動産の分捕り合戦が始まったのです。
 このケースがきっかけになり、収入がなくても土地などの資産があるのなら、もっと自立したゆとりある生活が送れなければおかしい、ということで生まれたのです。
 ですからあくまで終身福祉サービスである「基本サービス」に入っていただくのが前提なのです。
Q:それが武蔵野方式として大変注目されているわけですね。
ところでいまこのリバース・モーゲージのサービスを受けている方は何人くらいいるのですか。
A:いま23世帯です。
Q:それほど多くないですね。
A:そうですね。高齢で身寄りもなく、土地などの不動産をお持ちの方ですから、そんなに多くはないと思いますが、今後は増えてくると思います。高齢化が進むのと、普段全く付き合いのない甥や姪には面倒をみて欲しくないという方が増えています。
Q:何歳からサービスを受けられるのですか
A:65歳からです。
Q:月々いくら借りられるのですか。
A:8万円です。
Q:それでは生活できませんよね。
A:そうですね。当初、年金に加えてという考えでしたのと、スタートしてから同じ金額なので、もう見直しの時期にきているのかも知れませんね。
Q:民間のものでは、もっと融資金額の高いものもあるのでは?
A:ええ、ただ私どものものはあくまで生涯の福祉の一環として組み込んだものですから、だいぶ性格が違います。それに私どもでは、保証人も不要、子供の承認も不要ということで、誰にも頼りたくないというご本人の意志で利用できるという便利さが特徴です。
それに、住宅のリフォームやご入院の費用などはもっと高額の融資が簡単に受けられます。
Q:不動産価値の何割位まで借りられるのですか
A:一般的な不動産鑑定価格の8割程度です。
Q:金利はどの程度なんですか。
A:長期プライムレートに連動して年度毎で変動します。
Q:へんな話ですが、長生きをすると融資限度額を超えるというか、抵当割れを起こすケースもある訳ですね。
A:そうですね。お若いうちから入られた方では、限度額に達して打ち切りになる場合もあります。それでもこれまでは、お立ち退きいただくことはございませんでした。ただ、収入がなくなるので、施設に移られたり、生活保護に切り替えられる方もおられます。
Q:相続はしないで、より豊かにくらそうという、明るく楽しくという使い方はまずいのですか。
A:やはり公の資金を貸し出すので、審査で問題になることがあります。
ただ、こういう方もいらっしゃいました。海外旅行がお好きな方で、年金だけではいけないのですが、このサービスを使って毎月貯めておいて、年に2回程度旅行を楽しんでおられました。
Q:マンションでも融資の条件は同じですか。
A:いいえ、マンションは築年が古いと急激に資産価値が下がりますので、かなり厳しくなります。まず、対象は築13年以前の物件に限られて、23年までで打ち切りとなります。融資限度額も不動産評価額の50%以内になります。厳しいのですが、止むを得ません。
Q:そうですか、年金不安を抱える若い方が、将来この制度を利用しようとしたらマンションより、土地付戸建を買った方が有利なんですね。
A:不動産の評価基準が今後どうなるか分かりませんので何ともいえませんが、いま現在の制度でいえば、土地付の方が利用できる額は有利になっています。
Q:これからこの制度が増えていきそうですね。
A:武蔵野市で続けてこれたのは、やはり地価が高いということと、市の財政の健全度が高いということがあると思います。ただ、こちらのケースでも1千万円台の限度額の契約もかなりありますから、地方でも十分可能な制度だと思いますし、現にたくさんの自治体の方などが視察に来られています。
藤井様どうもありがとうございました。

取材を終えて
自分たちが築いたストックを、ゆとりある暮らしに生かしてゆくのによくできた制度と思いました。子供がいても、世話になりたくないという老世帯が増えている中で、こうした安心できる公的サービスがあれば、利用者は今後増えていくと確信しました。

どの方も心配されるのはお墓のお守のこと。武蔵野市では過去に4人の方の寄付で、お寺に公立の納骨堂を建設。福祉公社のサービスの一環として、死後の供養まで面倒をみているそうです。こうしたところは、リバース・モーゲージに隣接する制度としてとても安心感がありました。

この制度がうまく広がれば、不動産がずーっと眠りつづけて不動産会社から不動産会社へ売買されるというこれまでの決まった流れの途中に、小刻みな消費が生まれることになり、伏流水の一部が湧き水として地上を少しずつ潤すようなお金の流れも生まれます。

ただ、まだ福祉という制約の多い制度の限界も感じました。自分たちが築いたストックをうまく活用して、より楽しく豊かに暮らせるポジティブなライフスタイル応援型制度として拡大していって欲しいと思いました。
なぜなら、融資といっても実質は自分の資産の切り売りな訳で、そのことに公的融資だからと対象を制約する必要はあまりないのではと感じました。クオリティ・オブ・ライフの向上とは、マイナスをゼロにするだけではないのではと思ったわけ ですが、その辺は民業圧迫ということになってしまうのでしょうか。
みなさんの周りの自治体にこの制度があるか問い合わせをしてはいかがでしょう。
その問い合わせをきっかけにリバース・モーゲージの制度が生まれるところがあるかも知れません。

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